結論から
必要なのは6項目。請求書・領収書・納品書など、書類の名前は問いません。6項目が書かれていれば、手書きでも自作のExcelでも構いません。
実務で抜けやすいのは、①登録番号、②宛名、③10%と8%を分けずに合計している、の3つです。
1. 記載事項は6つ
国税庁の定義(No.6625)では、次の6つです。
出典: 国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」(令和8年4月1日現在法令等、2026年11月3日取得)
2. よくある抜け5つ
- 登録番号がない。登録番号は、登録後に税務署から通知される番号です。登録を受けていない期間の取引には、適格請求書を交付できません。
- 宛名がない。「上様」や「ご担当者様」だけでは、交付先の名称になりません(小売・飲食・タクシーなどの簡易インボイスを除く)。
- 税率を分けずに合計している。10%対象と8%対象は、対価の額も消費税額も分けて書きます。
- 軽減税率の対象品目だと分からない。「※」「☆」などの記号でも、税率ごとに区分して表示する形でも構いません。
- 交付した写しを保存していない。交付した側にも保存義務があります。保存期間は7年で、6年目・7年目は帳簿か請求書等のどちらかを保存すればよいとされています。
出典: 国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」「インボイス制度について」(2026年11月3日取得)
3. 小売・飲食・タクシーは「簡易インボイス」で足りる
不特定多数に販売する業種では、記載を省略した「適格簡易請求書」を交付できます。
- 宛名(⑥)は省略できる
- 適用税率(④)か消費税額(⑤)の、どちらか一方の記載でよい
受け取った請求書に宛名がなくても、不備ではなく簡易インボイスの場合があります。
4. 免税事業者だった人が最初に確認すること
インボイス発行事業者として登録を受けると、課税事業者として消費税の申告が必要になります。「請求書を出したいから」だけで決めると、税負担が増えることがあります。登録前に、次の2点を確認してください。
- 取引先が本当にインボイスを必要としているか(免税事業者のままでも取引を続けられる場合があります)
- 簡易課税や2割特例・3割特例が使えるか(使えると、受け取ったインボイスの保存が不要になります)
なお、免税事業者などからの仕入れについて、買い手側が一定割合を控除できる経過措置は令和13年(2031年)9月末まで続きます。令和8年度税制改正で控除割合が見直され(70%→50%→30%)、適用は「令和8年10月1日以後に開始する課税期間」からです。自分の事業年度でいつから変わるかは、国税庁の特集ページで確認してください。
出典: 国税庁「インボイス制度について」「令和8年度税制改正特集」(2026年11月3日取得)
5. 請求書を1枚ずつ作らないで済ませる
6項目を毎回手で確認するのは現実的ではありません。テンプレート側で固定してしまうのが早いです。
税率を10%・8%で分けて入力でき、登録番号と宛名を入れたままA4で印刷できます。入力内容はブラウザ内で処理され、サーバーには送信されません。
よくある質問
見積書にも登録番号は必要ですか?
見積書は、原則としてインボイスではありません。ただし「この見積にはこの登録番号の事業者が対応する」と示すために記載する会社は多くあります。請求書と見積書で番号が食い違わないようにしてください。
メールでPDFを送るだけでも大丈夫ですか?
PDFの交付自体は認められています。受け取った側は保存が必要なので、後から探せる形(フォルダ・ファイル名)で渡すのが親切です。電子データでやり取りした場合は、原則として電子のまま保存します。
登録番号はどこで確認できますか?
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で、番号や名称から検索できます。取引先から番号を伝えられたら、一度検索して確認する習慣をつけると安全です。
免税事業者のまま取引を続けられますか?
法律上は可能です。ただし、取引先が仕入税額控除を求める場合、控除できる割合が段階的に下がります。取引条件としてインボイスを求められることがあるため、相手先との確認が必要です。
この記事の前提
2026年11月3日時点で公表されている国税庁の資料に基づく一般的な説明です。制度は改正されることがあり、個別の判断は事業の状況によって変わります。実際の申告・記載の判断は、税務署の相談窓口または税理士にご確認ください。